オーケストラアレンジ勉強会 第3回(2007年9月-2008年2月)



◆ <デジャヴュ déjà vu>......復活祭


第1回の開催から二年の月日が流れましたが,このささやかな勉強会に今こうして新たにメンバーを加えることができるというのは望外の喜びです.ここは一度仕切り直した方がいろいろとわかりやすいかと思いますので,扱う課題は以前と同じなのですが,勉強会の<第3回>としてスタートさせていただきたいと思います.

まずは課題のご紹介から始めましょう.提供はgratinさんです.

今日の素材はこれだ!

ちなみにこのまんまピアノで慣らしてみると,だいたいこんな感じになります.


第1回のテーマは<ゲームのオープニング風>ということでしたが,今回は(同じ課題で二度目の募集ですし)より自由な発想で料理していただいてよいかなーと考えております.

「招待演奏」として第1回勉強会のトリを務め,そしてこの第3回のオープニングを飾るのは,《コルドンブルー》gratinさん自身の手によって完成された「overture(完全版)」です.どうぞお聴き下さい.

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overture(完全版)
作編曲:gratin

フルオーケストラによる素晴らしいアレンジだと思います.名調理人の手にかかると先ほどの素材からこのような見事な作品が生まれるのですね.さてここからは早速,2007年に寄せられたアレンジの数々を見て行くことにしましょう(順次追加となります).


◆ 新たに寄せられたアレンジ



(各メンバーの作品,敬称略,並びはてきとー,サブタイトルは勝手につけました笑)

cresc版 〜 遥かなる丘 mp3ファイル
編成:ピッコロ,フルート,オーボエ,イングリッシュホルン,クラリネット,バスクラリネット,ファゴット,コントラファゴット,ホルン,トランペット,トロンボーン,チューバ,スネア,シンバル,大太鼓,ティンパニ,ハープ,チューブラーベル,弦楽器群
<コメント>

新規参加となるcrescさんのアレンジ.スネアを用いたマーチ風のアプローチは,第1回の<ゲームのOP>というテーマにも適っておりまして,爽やかな風を感じさせる正統派アレンジだと思います.

中間部(陰転,8小節間)への移行,そして主題への復帰箇所も自然に流れますし,何と言っても対旋律をからめたアンサンブルが大きな聴かせ所となっていると思います.オーケストレーションがやや細々と動きますが,弦楽器を基調にまとまりを作ってあって特にせわしない印象はありません.
最後は「思いつかなかった」とのことでしたが,ここまで来ていれば主和音ロングトーン1発で十分収められたかもですね.締め方に関しては少なくとも前回の三月版よりは遥かにマシですから! と申し上げておきます.


evnc_chck版 〜 神々の凱旋 mp3ファイル
編成:フルート,クラリネット,ファゴット,トランペット,ブラス高音および低音,ティンパニ,シンバル,スネアドラム,ストリングス1st,ストリングス2nd,ストリングス低音,ハープ
<コメント>

完成まで他の方のアレンジはあえて聴かなかったというevnc_chckさん.サブタイトルも自ら考案と,気合い入ってます.金管セクションが大活躍する華々しいアレンジとなっていますね.

重厚なサウンドが輝かしい勝利を知らせます.凱旋する神々と,伴われたワルキューレたちの誇らしくも勇壮な姿が目に浮かぶようですね.リズムの若干のタメ,和声的な冒険など,「遊んで来たー!(笑)」と思わせる要素もいっぱいです.ややアクロバティックな部分もありましたが,きっちりフィナーレへつないで大団円.聴き終えた後で爽やかな印象の残る,若々しく気持ちのよいアレンジだったと思います.
神々の凱旋(改訂版) mp3ファイル
編成:フルート,クラリネット,ファゴット,ホルン2管(後半4管)、トランペット,ブラス高音および低音,トロンボーン、ティンパニ,シンバル,スネアドラム,ストリングス1st,ストリングス2nd,ストリングス低音,ハープ
<コメント>

evnc_chckさん,サロンでの議論をふまえて早速の改訂版です(!).編成にホルンとトロンボーンを追加した他,細部までいろいろと修正がなされたようです(詳細はサロンにて).ミックスは金管を少し奥に引っ込めたということで,すっきりと聴きやすい響きに変わったと思います.どうぞ前のバージョンと聴き比べてみて下さい.


56版 〜 序曲<お菓子の城> mp3ファイル
編成:「Warm Strings」・「Velo Strings」・「SC Strings」・「$SC Strings」(以上SC-88pro)・「Camera Strings」(Triton-Rack)・コントラバス・チェロ・オーボエ・フルート・ピッコロ・ファゴット・ホルン・ハープ・ティンパニ・シンバル
<コメント>

テーマはずばり「ディズニー」だったという56さん.明るくて楽しいアレンジに仕上がっていますね.

イントロはお見事.これからどんな物語が始まるのだろうと,まるで童話の世界に迷い込んでしまったかのような胸の高鳴りを覚えます.雰囲気のぱっと変わる後半では,ディズニーのマーチのような低音の動きがユーモラスなキャラクターの登場を思わせますね.全体の雰囲気といい,ハープやフルートの装飾的な使い方といい,オケ初心者とは思えない出来映えだと思います.聴いていて楽しくなりますね.ついつい微笑んでしまいます.
<お菓子の城>(改訂版) mp3ファイル
編成:(変更なし)
<コメント>

56さんの改訂版です.冒頭のティンパニロールなどはくっきりと変わりましたね.バス声部(ベースライン)の反行,そして後半に追加されたテューバなど,サロンでの議論がしっかり反映されたバージョンになっています.どうぞ初版と聴き比べてみてください.


My World版 〜 大都市 mp3ファイル
編成:ピッコロ,フルート,オーボエ,クラリネット,ホルン,トランペット,トロンボーン,チューバ,バスドラム,スネア,シンバル,弦五部
<コメント>

引越し等でパタパタしてましたというMy Worldさんのアレンジは,大都市の楽しい様子を描いているそうです.ピッコロトランペットを先頭にオーケストラの楽器たちが踊ります.軽快で明るくて,うきうきしてきますね.

すっきりと聴きやすいミックスで,なおかつオケ特有のダイナミクス(音量の大小の落差)を生かした見事なアレンジだと思います.弦やパーカッションが刻み続けるリズムによって,全体の統一感が確保されていますね.課題のモチーフを一度解体して組み立てなおすというプロセスを踏んでおりまして,このことによってアレンジの自由度が大幅に上がり,リズミカルなスネアを生かすことに成功していると思います.ちょっと目から鱗でした.どこか「ファイナルファンタジー」の植松さんを彷彿とさせる楽しげな街の風景が目の前に広がります.




◆ サロンで午後のひとときを


アレンジをお聴きになったところで,慣習通り,サロン(BBS)での意見交換に移りましょう.まずは各アレンジに対してざっくばらんに感想など出して頂ければと思います.

いろいろ考えたのですけど,今回はサブテーマを「オーケストレーション」1本に絞らせて頂きたいと思います.適材適所な楽器の用い方についての話はもちろん,DTMオケ特有の文法についても踏み込んで行けたらいいかなーと考えています.

まあまあ,のんびり行きましょう(笑).活発で生産的な議論の場にしたいですね.




 ◆ その Coda は茜色に染まって


みなさんおつかれさまでした.年をまたいでしまいましたけれど,この2008年2月1日をもちまして,第3回勉強会の一応の閉会とさせていただきたいと思います.とても有意義な議論になったことと思いますし,大きなトラブルもなくこうして無事<コーダ>を迎えられたことに,主催者としましてはほっと胸を撫で下ろしております.課題提供のgratinさんはじめ参加者のみなさんには,この場をお借りして,本当にありがとうございましたと,心よりお礼申し上げます.

さて,第3回勉強会のエンディングを飾りますのは,Etukoさんの手によるピアノアレンジ版《overture》です.どうぞお聴き下さい.

image
 

 《序曲〜 overture》
  編曲:Etuko

  (招待演奏)

きれいですね.幼い日に見た学校帰りの夕焼け空のような,
どこか懐かしくてあたたかいアレンジだと思います.
(credit:お菓子な日々H.18EtukoさんHPトップ


第3回勉強会はこれにて終了いたしますが,もちろんサロンの方はいつでも開放されています.各アレンジにつきましてあらためて気づいた点などありましたら,どうぞ遠慮なさらず,お気軽にひとこと残していただければと思います.


ではまたみなさん,カフェ・ド・ブラームスでお会いしましょう.





(温かい珈琲でも飲みながら,どなたもお気軽にご入室下さい)

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