補習のお時間


(からんからん...)

gogatsu

五月ウサギ:あ,いらっしゃいませー



montez

ル・モンテズ猫の名前を 知っているか



gogatsu

マジ?! ブロードウェイミュージカルがやって来たわッ! って伯爵,もうちょっとわかりやすいので入ろうよ.久々なんだし


モン:いやー今日は<キャッツ>を一緒に見ようと思ってのー

五月:え,DVD? DVD? '+。:.゚ヽ(*´∀`)ノ゚.:。+゚

モン:私がつくった紙芝居なんぢゃが

五月:もう帰っていいわよ


cafe


 横の流れを考えてみる


モン:ふー,やはりうどんは関西に限る!

五月:コーヒー飲みながら何言ってるのよ.それより早くキャッツ見ようよー

モン:まあ待ちたまえ.今日はV度和音の話をせにゃならん

五月:そうだったわね.お兄ちゃんの話はV7のことだけだったし

モン:三月殿の話をまったく別の角度から振り返ってみるぞ.これを見ておくれ

g-dur


五月:シャープひとつ,ト長調(G-Dur)の音階と和音ね

モン:ハ長調からこのト長調へ転じることを考えてみよう.ハ長調には出て来ない音がひとつ混じっているが,それが何かわかるかい

(参考:ハ長調)
triad

五月:そんなのファ#に決まってるじゃないの! いくら私でもわかるわよ

モン:そう,ト長調へ転調する時には,曲中にそのファ#の音をどうやって出現させるか,それが問題になるのぢゃ

五月:え,それってファ#を含んだ和音を探して,そこにつなぐってこと?

モン:方法はいろいろある.三月殿が繰り返し説明しているのは,その<和声>を重視する方法だね.だけど,メロディラインの横の流れで出現させるやり方もあるんぢゃよ

五月:横の流れ〜?

モン:♪ドシラソファ#〜とかね.なだらかな流れを作っていくのぢゃ.あるいはドードドファ〜,ドードドファ#〜とか

五月:それって,転調のためにメロディをいじらなきゃいけないってこと?

モン:いや,どのパートでもいいんだよ.前回,ソプラノ,アルト,テナー,バスの4つの声部の話をしたぢゃろ.簡単に言うと,4本のメロディが同時演奏されていることになる.クラシックのピアノ曲で左手パートが激しく動き回るのを見て驚いたことはないかい?

五月:あるかも.和音がよくわかんなくなるのよね

モン:クラシックの和声理論は,コード理論の出現よりもずいぶん昔からあるからね.まずコード進行を組んで,というよりはむしろ,和声は結果的に出てくるものという位置づけなのぢゃ

五月:ねえ伯爵,もしかしてすっごい難しい話はじめてる?

モン:いーや,実際に書いてみればそうでもないとわかるよ(笑).慣れるまでは3声部だけで十分ぢゃ.立派に曲になる

五月:じゃあ,そうやって何とかファ#を出せたら,転調成功なの?

モン:いーや,和声もやっぱり大事なんぢゃ.前言ったように<V7-I>の調の宣言がないと,調が確定しないからね.ちなみにV7には必ずどこかにこの<転調先の調で新しく現れる音>が含まれているよ.ト長調のV7はレファ#ラドぢゃろう?

五月:うっそだー! じゃあニ長調(D-Dur)からト長調への転調だったら? レファ#ラが共通して......あっ

モン:そう,今度はドが「新しい音」なんぢゃな.D-Durの音階だとドの代わりにド#が鳴ってるからね

五月:そうなのかー,<転調先のV7>がよく使われる理由がわかったような気がするわ

モン:結局のところ,転調元と転調先のスケール(音階)で共通してる音はピボットとして使えて,共通してない音は「あ,何か変わったぞ」という感じを与えるのに使えるのぢゃ


plate


 ブロードウェイに学ぶ


モン:さてさて,和音自体のつなぎ方がけっこう何でもアリなのは,三月殿の話でもわかったと思う

五月:そうね,あんなに拡張しちゃって大丈夫なのかしら

モン:大丈夫ぢゃ,ただしひとつだけ気をつけないといけないことがあるぞい.<終止形>(カデンツ)だ.要するに,ちゃんとオチをつけるということぢゃな

五月:トニック王(I度)で行う<全終止>と,ドミナント王妃(V度)で行う<半終止>だったわね

モン:加えて基本の4小節単位での進行も忘れちゃいけないよ.これらの点さえ守っていれば転調は自由自在ぢゃ.さーてそろそろ<キャッツ>でも見ておこうか

五月:やったー!! ねこー,ねこー!

モン:とりあえず冒頭だけだぞい(笑) 曲の方をよーく聴いて,何が行われているか聴き取って欲しい



<ミュージカル『キャッツ』よりプロローグ>



五月:いいなー......,私も猫になりたい

モン:難しいことは一切行われていない.前半は平行調でシャープフラットの増減なしの移動(陽転/陰転)が行われているね.あとは半音上への転調が何度か見られる

五月:4小節単位の進行,崩れてない?

モン:崩してあるよ.前へ突っ込む(省略)のと,同じ和音で後ろへ引っぱる(延長)ケースが見られるね.手をかえ品をかえ,同じフレーズを何度も聴かせている.このあたりは非常に巧い

五月:フレーズの終わりって,I度じゃないことがあるわね

モン:そうぢゃよ.ドミナントで<半終止>してぱっと次のフレーズに入ってもいいのぢゃ.それでオチがついたことになってるんだね.だから主和音の後ろと同じように,属和音の直後も転調のチャンスになるのぢゃ.<終止形>にだけ注意してな.それから三月殿が次に話す<反復>の利用も見られ......

五月:伯爵ー,はやく続き見ようよー

モン:あのー五月殿,今日の話おぼえてる......?

五月<猫>(どーん)

モン:ま,まあゆっくり行こうか(笑).コーヒーのお代わりをもらえるかい



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