補習のお時間


gogatsu
こんにちはっ,五月ウサギです.

《転調作法》の第2部がスタートしました.みなさん準備はいいですかー.


この第2部では,具体的な和音のつなぎ方など,細かすぎてなかなか誰も教えてくれないことについて,三月兄さんのほうからちょろちょろっとお話があるみたいです.


そしてこの補習は,引き続き私五月ウサギと,かつて宇宙遊泳中に迷子になり,火星から単独生還した唯一の人類として知られるル・モンテズ伯爵で,お送りします




montez

ル・モンテズ:あーもう大気圏突入時には暑くて死ぬかと思ったよ,ってなんでやねん


gogatsu

伯爵もいろいろ大変なのねー




モン:五月殿もだんだんキラーパサーになってきたのう

五月:えらいえらい.今日はサービスでケーキをつけるわ

モン:おお,ありがたいねえ

五月:クリスマス終わったのに大量に余ってるの

モン:まあそんなことじゃろうとは思ったよ


cafe


 和音ってどーやってつなぐのよ


モン:こんな日はやはりブランデーが最高じゃな.ふー,効くねえ

五月:ちょっと伯爵,コーヒー飲みながら何言ってるのよ.ねーねー今回の話,さっそくけっこー難しかったと思うんだけど......

モン:だいたい最近の三月殿ときたら何ぢゃ! どうせ補習があるからと思って手を抜いておる!

五月:う,うわ,いきなりキレないでよ(汗)

モン:説明だって楽典用語を使うのか使わないのか中途半端だし,例題もテキトーで何の参考にもならんし,めんどうなことは全部ワシらに押し付けて,こんな暮らし,ワシはもう,ワシはもう......♪ハレルーヤ!(☆きらーん)

五月怒ってるのか喜んでるのか全くわからないー!(がびーん)

モン:まあそんなわけで,転調の前にちょっと,和音をつなぐ時の基礎の基礎を見ておこうか



♪例題a

モン:横に長いので手動スクロールしてくれ.三月殿が省略してしまった前半を書き足しておいた.まあおかげでしっかり前の調を引っぱった後でないと転調しても効果がないのが分かった訳だが

五月:私の苦手なヘ音記号が出てきてるわよ

モン:根音を書くためのバス(ベース)声部ぢゃ.和声の話をするのに三声のト音1本だとちょっとつらいのじゃよ.基本の四声(ソプラノ,アルト,テノール,バス)で書く.我慢しておくれ.ちなみにソプラノ声部(いちばん上)にセレスタを重ねておいた.音源によってはピッチがびみょ〜だが,やはり我慢してくれ

五月:とか言ってるあいだにスクロールで流れていっちゃったんですけど

モン:ええーい,では新規ウィンドウで譜面を開いておこう.てきとーにちっちゃくして参照してくれい.五月殿,最初の2小節を見てごらん

五月:えーと,ハ長調で,最初がソドミ,次がラドミの和音ね.I度って書いてあるけど,ソドミってドミソと一緒でいいの?

モン:一緒でいいよ,ただしこういう風に順番が繰り替えられているのには理由があるのぢゃ.メロディラインもあるが,前後の和音との兼ね合いで決まる

五月:えっそうだったの? 好きに入れ替えちゃいけないの?

モン:ソプラノならソプラノ,アルトならアルト,各声部の<横の流れ>も大事にしないといけないのぢゃ.あとで楽器の振り分け(オーケストレーション)をした時に,<どの楽器にも歌がある>ようにしておくということだよ.ところで1小節目はI度でドミソの和音.2小節目がVI度,ラドミの和音じゃな.五月殿,この二つの和音に共通する音は何だい?

五月:ドとミが一緒ね.......あーそういうことかー

モン:この場合は,ド,ミは動かさない.テノール声部(上から3つめ)だけがソ→ラと進んでいて,それで和声が変わるのだね.このように,共通する音をピボット(軸)にして和声が動いて行くんじゃ

1-4小節目

五月:なるほどね.そうやると自然な流れができてくのね.2小節目から3小節目は,ラの音が軸になってるのかー

モン:そうだね.他の音はなるべく近いところへ動くんじゃ.3小節目のファの音は上がっているのが自然だが,オクターブ下がっているね.これはメロディラインとの兼ね合いにもよる

五月:伯爵,3小節目から4小節目って,レの音が共通じゃないの? めっちゃ下がってるわよ

モン:おおお,<II→Vの進行は慣習的に下げる>のじゃよ.ピボットしないという例外中の例外だが,お約束なので覚えておいてくれ


plate


 共通する音が無かったらどーすんのよ


五月:えーじゃあさー,共通する音がない和音には進んじゃダメってことなの?

モン:いや進めるよ,その場合はルール2があるのだ.ここでバス声部の話が絡むのだよ.I度→II度の進行を考えてみよう

I-II

♪ I度→II度

モン:ドミソとレファラ.こういう軸になる音が無い場合は,ベースの動きに対して反行させる.つまり,バス声部の音が上がる場合はそれ以外の声部は音が下がって行くようにして,逆にベースラインが下降する時には他の音を上げるのぢゃ

五月:そうなのかー,一緒に上がって行くと確かにちょっと重い感じがするわね

モン:この<バスと反行させる>というのは,軸になる音がある場合であっても,自然な流れを作って行く上で常に心がけておきたいね.例えばベートーベンの楽譜を読んだりすると,見た目にも非常に美しい感じがする.そのキーポイントになっているのがこの<反行>だろうね

五月:ねえねえ,ベースラインって必ずその和音の根音が来るの?

モン:実はそうでもないんじゃ.バス声部にはバス声部の歌がある.和音を<転回>させることによって,他の音をベースラインに回すこともできるのじゃ.しかし五月殿はまだそんな高度なことを考えなくてもよろしい.まずはしっかり根音を書いておくのがわかりやすいはずだよ.何ごとも慣れてくるまでは基礎練習が大切なのじゃ

五月:うわーなんだか覚えきれなくなってきたよ......

モン:では今日の補習はここまでにしようか.転調の話まで届かなかったな.まあ次回,全終止(I度)からつなぐ場合と半終止(V度)からの場合を,まとめてやっつけるとしよう(笑).さ,今日覚えるべき<和声連結の基本ルール>は二つだけぢゃ.

1.同じ音がある場合は,その音を動かさず,軸として使う
2.同じ音がない場合は,ベースラインと逆の動き(反行)

モン:この二つさえ守っていれば大崩れしない和声進行が書けるよ.もちろん音楽のルールなんぞ,必要とあらばいつでも破っていいんだが

五月:ええー,じゃあこの<転調作法>って何のためにやってるの?

モン:理論なき実践も実践なき理論も空しいってことさ(笑).さて,コーヒーをもう一杯もらえるかのう



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