補習のお時間 |
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(からんからん...) 五月ウサギ:いらっしゃいませー ル・モンテズ:頼もーう! このカフェの看板はもらい受ける まずいっ,<道場破り>だわっ! って伯爵,もうちょっとふつーに入ってきてよ モン:すまんすまん,手みやげのこの高級和菓子セットでかんべんしてくれ 五月:どう見ても水戸納豆3個パックなんですけど モン:細かいことは気にするな.それより五月殿,コーヒーをもらえるかのー 五月:はぁーい I度とかII度って何なのさ五月:ちょっと伯爵,今回のお兄ちゃんの話,記号がいっぱい出てきて私おいてきぼりだったんだけど! モン:おお,おお,和音の話のところだね.ではまず,これを見るんじゃ (再掲.ハ長調:ドレミファソラシド.図はdegienvall氏による) モン:ハ長調,つまりピアノの白い鍵盤の音だけで出来ている音階だね.ここに音を重ねて,和音を作ることができるんだよ. モン:各音から数えて3度と5度の音が乗っかっただけだよ.すべてハ長調に出てくる(白い鍵盤の)音だけを使って作られている和音ぢゃ. 五月:いちばん左がドミソの和音ね モン:そうアルよ.左から順番に,I度和音,II度和音...という風に呼ぶネ. 五月:なんで中国の人みたいになってるのよ.ドが1番目,レが2番目の音だからそう呼ぶのね.でもどうして数字を使うの? レって言った方がわかりやすくない? モン:うむ,今はハ長調で話を進めているから問題ないんだが,例えば「ト長調のドの音」とか言われると,ちょっと混乱を引き起こす恐れがあるのぢゃ.ピアノ実音のドの音なのか,それともト長調でドに相当する音(ソ)のことなのか,人によってイメージする音が違ってくることがあるのだよ.でも「ト長調の第1音(主音)」と言ってもらえれば誤解がなくてすむ.これは先人たちの知恵なんぢゃよ. 五月:そうか,数字にしといた方がいろいろ応用が利いて便利なのね.つまりドレミは言わば絶対座標指定で,I,II,IIIという呼び方は相対座標指定なのね. モン:ご,五月殿,あまりむずかしいことを言わないでくれ.わしの方がおいてけぼりになっちまう(汗) 「主要三和音」ってなに?モン:ところで五月殿,実際に弾いてみるとわかるが,この7つの和音のうちで長調の明るい響きがするのは3つだけぢゃ 五月:えっ,ぜんぶハ長調で使う和音なのに? モン:赤で示した I, IV, Vのところがそうで,これらを<主要三和音>と呼ぶ. 五月:しゅようさんわおん〜? モン:よく使われるとても大事な和音なので,ひとつずつ紹介しておくぞ. ・I 度【主和音】(トニック) モン:I度和音は「主和音(しゅわおん)」と呼ばれる.ハ長調ではドミソだね.もっとも大切な和音で,これが出てくるとみんな安心するのぢゃ.調を決めるためにも必要不可欠だよ.7つの和音たちのなかで中心的役割を果たす.言ってみたら家臣団を率いた<王様>のようなものぢゃ. 五月:トニック王ですか モン:まあわしとは「モンちゃん」「トニー」と呼び合う仲... 五月:あんたいつから和音になった?! ・V度【属和音】(ドミナント) モン:次に重要なV度(ごど)和音,これは「属和音(ぞくわおん)」という名前がついているよ.漢字で書くと難しいけど,要するにソシレの和音のことだね.トニック王をしっかり支える<王妃>さまぢゃ.しかしこの王妃さま,ときどき,いや結構ひんぱんに,ふっと不安におそわれることがある. モン:ファの音が混じるのがそのサインぢゃ.V7(ごどせぶんす)に変身する.こうなるとすぐに王様が飛んできて(V7→I)安心させてやるんじゃよ. ♪強進行の一例 五月:素敵.王様はやさしいのね. モン:これを強進行(ドミナントモーション)と言う.本当は王妃さまは何かにぶち切れてツノが生えており,あせった王様が飛んでくるという説もあって,だから恐妻進行とも呼ばれる(<うそ). 五月:みょーにリアル.トニック王は奥さんに頭が上がらないのね モン:ちなみにハ長調から見ると,ソの音(第5音)が「属音」,ソシレの和音(V度和音)が「属和音」,ソを主音に持つ調(V度調)が「属調」ということになるので,「属」というのは5のことを示していると覚えてもらってかまわんぞい. ・IV度【下属和音】(サブ-ドミナント) モン:最後に紹介するのはIV度(よんど)和音.「下属和音(かぞくわおん)」=属和音のすぐ下,というちょっと哀しいネーミングとなっている.<王子>さまじゃな. 五月:王子さま?!(きらきら) モン:リアクションいいな(笑).だがこの王子さまはまだ幼いところもあって,ちょっと目を離すとすぐにママを呼びたがる(IV→V). 五月:なんだマザコンかー モン:いやしかし,普段は堂々と振る舞っているよ.王様ともとても仲がいい. ♪変格進行(変進行)の一例 五月:あー,王妃さまの時ほどしっかりと「終わったー」って感じはないけど,これはこれでなかなかチャーミングね. モン:まあ名前は覚えなくていいけど,このIV-Iという流れを変格進行,あるいは単に変進行と言う.またさっきと同じく,ハ長調でのファの音(第4音)は「下属音」,ファラドの和音(IV度和音)は「下属和音」,ファを主音に持つ調(IV度調)は「下属調」となる.「下属」は4のことを表しているのぢゃな. *** 五月:なんだか今日のお話は,けっこうむずかしかった気がするー モン:用語がからむと難しく感じるだけぢゃよ(笑).今日は,特別に名前がつけられているくらい大事な和音が3つあって,それは1,4,5のところだ,それだけ覚えていればいいよ. 五月:ドミソの和音,「主和音」だっけ?,がいちばん大事だっていうのはわかるけど,王妃さまと王子さまは実際のところどう大事なの? モン:結局ド-ソのような5度の間隔がとても安定した響きなのぢゃ.第5音は主音をしっかりと支える役目を果たす.そしてV度和音は主和音(I度)を強力にサポートする力を持つのぢゃ. 五月:それでソのあたりも大切になってくるのかー.ファはどうなの? モン:ファから数えて5度上の音はなんだい? 五月:ファ,ふぁそらしどー,......ドだ! モン:そう,第5音と第4音はそれぞれ,主音から上下にぴったり5度離れたところに位置しているのぢゃ.だから大事なんだね.実は長調や短調の音階(全音階)は,この5度がどこからでも作りやすいようにできてるんだよ. 五月:うわぁ,王妃さまも王子さまもエラいんだ モン:それから和声進行するとき,たとえば王様は次にいかなる和音も呼びつけることができるが,逆に王様を呼ぶことができるのは(基本的に)その二人だけなんじゃよ.まあでもこの話はまた今度にしよう.コーヒーおかわりもらえるかのー. |